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うつ病の療養について(概要)

うつ病といっても様々なうつ病があり、うつ状態を生じる他の精神疾患も多くあります。ご自身やご家族が、“うつ”ではないかと感じた場合は、正確な診断の元、その人に見合った治療・療養を組み立てる必要があります。一般に「うつ病」と診断された場合の基本的な療養について今回はまとめ、それを通じて、「うつ病」について理解を深めてみたいと思います。

1. 精神科医によって診断された場合、「うつ病」は気持ちの問題では決してなく(適切な治療で回復する可能性が高い)脳の機能障害であると本人・ご家族ともに理解することが必要です。うつになる機序として“モノアミン仮説” あるいは“神経障害仮説”が有力な仮説として提示されていますが、その仮説からも、脳の神経細胞の機能障害が生じていることが明確に読み取れます。

2. 治療には少なくとも数ヶ月という時間がかかることを理解し、決して焦らず、十分に休養することが必要です。回復も一進一退しながら徐々に回復して行きます。ここでいう休養とは身体が生体としてリラックスできている体制になることが重要です。仕事をお持ちの方でうつに陥った場合、仕事を一旦離れて自宅療養とすることが多いですが、休んでいても一向に休まらず辛く苦しいと身の置き所がない状態が続く方もおられます。これはどこかで触れたいと思いますが、生体機能調整系脳機能が崩れたことによって生じる状態だと思われます。仕事から離れることで、身体的リラックス状態に入れる方も多いですが、それでも苦しい状態が続く場合は適切な薬物治療が役に立ちます。

3. うつ特有の心身の辛さや罪悪感などから、「いっその事いなくなりたい」と漠然とあるいは具体的に繰り返し考えてしまうことがあります。その場合は、そのことについて主治医と相談してください。受診前の方は速やかに医療機関に相談してください。ご自身の意思と関係ないところで、コントロールの効かない行動に出てしまうことがあります。うつの状態は脳の機能が低下していることもあり、本来のご自分の考え方ができず、否定的なこと悲観的なことを絶えず考えるようになるので注意が必要です。

4. 抗うつ薬など薬の使用に関しては、使用を躊躇される方もおられると思いますが、抗うつ薬は神経の障害を回復させる効果のあることがわかっています。つまり抗うつ薬を使うことで障害されている神経の回復が促進され、辛いうつの状態から早く回復できることがわかっています。また適切な薬物治療はうつに伴う様々なリスクを減らすことが出来ます。抗うつ薬も多種存在しており、適切に薬剤選択し慎重に使うことが求められますが、主治医と十分相談の上、抗うつ薬は適切に選択された薬剤を、適度な量で十分な期間使うことをお勧めします。

5. うつの状態にあると適切な判断が難しくなっています。思考の柔軟性がなくなり悲観的になっている状態で退職や離婚などの重大な決断をすると人生の重要な機会・環境を失ってしまうこともあります。大きな決断をする必要があれば、うつの十分な回復を待ってから、行うようにしましょう。

回復の過程は、心身ともに寛げる状態になれていること、睡眠の時間や質を含めて生活リズムが安定すること、集中力や決断力が戻ること、1日活動しても翌日に疲れが出ないことなどを通じて実感していけるものです。慢性的な高ストレス状態が続く場合、うつ状態に陥りうつ病となることが多いと思いますが、ご本人の対人関係スキルや考え方や行動のパターンが慢性的な高ストレスを生んでいる場合もあり、その場合はうつの治療が落ち着いた段階でリワークプログラムをこなすことが、職場復帰のために必要となることもあります。うつの成り立ちや適切な治療的関わりは当事者一人一人で異なります。うつに陥ったことやそこから回復することはご本人の生活・人生にとって節目となることも多いという印象があります。図らずも“うつ”になってしまった場合は、信頼できる治療者・医療機関のもとでじっくりと腰を据えて治療に望んでいただきたいと思います。

野口クリニック院長ブログより引用)

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