躁うつ病の診断・治療
躁うつ病は躁状態とうつ状態を繰り返す精神の病いです。双極性感情障害とも言います。
躁状態とうつ状態
躁状態では、睡眠をほとんど取らないか短時間睡眠となりますが、その状況でも爽快気分で活動的に動き回り、多くの場合は行動の逸脱が見られます。必要がない理に合わない浪費(100万単位での浪費も珍しくありません)を重ねたり、誰かれ構わず話しかけ喋り続けたり、場合によっては興奮を起こし、コントロールを失い暴力行為や違法行為を行なったりという状況に至ります。誇大妄想が出現することもあります。こうした激しい状態に陥ると、明らかに周囲から見ても異常であるため、ご家族など周囲の方々によって病院に連れてこられます。入院治療が必要なことも多いです。
逆にうつ状態になると一転、反応が鈍くなり、表情も乏しいか苦悶様となり、動けないばかりか食事をとる気力すらなくなり寝たきりになる場合があります。そしてうつの状態は身体的にも身の置き所がないほどの辛さ、苦しさを体験している方も多々います。場合によっては入院で治療をしないといけなくなります。そこまでいかなくても食事で味が感じられず食事量も大きく減り、趣味もできなくなり新聞など文章を読むことや人との会話が苦痛になるため、家にこもり横になって過ごすことが多くなります。躁うつ病ではうつ状態の時期が躁状態よりも長いことが知られています。
わかりずらい躁うつ病
躁うつ病は典型的な症状があれば、診断はそれほど難しくありませんが、中にはわかりずらい躁うつ病があります。ハイテンションで睡眠を削り精力的に仕事や生活をこなすことができ、晴れ晴れと活躍していた方が、突然うつ状態になり(生活上の大きな出来事がきっかけがあることもあります)、頭が働かなくなり記憶力も落ち、食欲低下を認め、仕事にもいけなくなって、自分でも“うつだ”と思って受診してこられます。うつ病と診断して治療を行い改善した後に職場復帰を果たしますが、しばらくすると再度うつ状態となるということを繰り返す方がいます。こうした方々は反復性気分障害といって“うつ”を繰り返す病いとして治療を行いますが、こうした方々の中に躁うつ病の方が誤診されて紛れ込んでいることがあります。正しい診断に至るまでに10年近くかかる方もいます。うつ病と躁うつ病では薬物治療の根本が異なります。浪費や過活動が許容範囲内にあるため目立たず躁うつ病の疑いがかからないのですが(多くの場合は調子が良い時の事は本人・ご家族からも語られません)、明らかな気分の波があり、うつ状態の時には社会活動ができなくなることを繰り返している方は一度躁うつ病を疑ってみる必要があります。当院では、こうした医学的背景を理解し、躁うつ病とうつ病を見分けることができるように意識を高めています。うつ状態を繰り返しており、改善は乏しいと感じる方は一度、躁うつ病を疑い主治医の意見を伺ってみると良いでしょう。